シンポジウム「文化遺産としての旧朝倉家住宅とヒルサイドテラス

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2019年11月19日(火)にヒルサイドプラザでシンポジウム「文化遺産としての旧朝倉家住宅とヒルサイドテラス」が開催されました。
青柳正規(元文化庁長官)、後藤治(工学院大学教授/日本イコモス国内委員会20世紀遺産20選選定WG主査)、山名善之(東京理科大学教授)、槇文彦(建築家)により、ユネスコ世界遺産登録の諮問機関ICOMOSの日本支部により、顕彰すべき20世紀の文化財20件のひとつに選定された旧朝倉家住宅とヒルサイドテラスの価値と今後について議論されました。

『日本の都市から学ぶこと(バリー・シェルトン著)』に掲載されている図。
名古屋市のティピカルな道路で広い道路に沿って高い建物が建っている。これが日本の普通の都市の姿だが、皆さんがヒルサイドテラスに来て、何か気持ちがいいということがあるとすると、旧山手通りは広い通りでパブリック性が高いけれども、そこに密着している建物が高くも大きくもないということではないか。

ここではいくつかの広場を設けれる可能性があった。
ヒルサイドテラスは、容積率は150%で高さ10mという制限の中で、比較的人口が少ない、出会いのチャンスが非常に多い場所になってきた。
ここで仕事をしたり住んでいる人の愛情が、代官山ステキなまちづくり協議会をつくり、そこがいろんなことを言い始める。そのような東京では珍しいコミュニティーの形成ということが出来た。

普通ならば左の画像のように高い建物が出来てくる。ところが右側は今のヒルサイドテラス。つまり、いきなり立派な道に生活の場がひっついたのでこういう姿になっている。

T-SITEの設計者に選ばれたクライン・ダイサムは、敷地内の大きな木を残して欲しいという要請を受けて、T-SITEの建物全体を少し道から後退させてくれたことで道沿いにある種のパブリックスペースが出来た。このようなことから、ヒルサイドテラスはどこかでまちづくりに貢献しているということが言えるのではないかと思う。
ここが建築家だけのつくるという行為ではなく、皆さんの行為によって育てられてきた場所だということが、東京でも非常にユニークな場所になっている理由だと思う。

ここに住む人、働く人たちに、「ここはいい場所だからちゃんと維持していこう」というコミュニティー意識が生まれてきたということが非常に大事だと思う。
それが、歩道橋の撤去とか、T-SITEでパブリックスペースがつくられるとか、連続した潤沢な都市環境を継続的につくってこれたことに繋がったのではないかと思っている。
文化というものは最終的には無償の愛(Unconditional Love)であるべきだと思う。これからの都市づくりの中では「無償の愛」という行為が大事ではないかと思っている。
ヒルサイドテラスは文化遺産と言うよりは、今でも生き続ける建築・都市ではないかと思う。

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