TaKu‘ ,n「LABYRINTH」

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Space K(猿楽町25-1)では、2021年4月15日(木)から21日(水)の期間、「TaKu‘ ,n 7th ART SHOW LABYRINTH」を開催しています。
ここしばらく考えていたことがあって、告知に掲載されていた彼の作品を観て現物が観たくなり、久しぶりにSpace Kを訪れました。

ある程度長い間生きていると、いわゆる流行りというものの移り変わりを経験することになります。ある時代を席巻する表現のスタイルというものは、その時々の社会情勢が反映されて表出してきたもののように思えます。そしてそれは、個人にとって原風景が形成される年代に遭遇したものが、その個人のその後の嗜好と表現に大きく影響を及ぼしているのだろうと感じています。
単純な話、どのようなものにカッコよさを感じるかとか、憧憬の念を抱くかといったことは、多くの場合、若かりし頃にどのような時代を生きてきたかということに縛られているものだと感じています。

モッズあるいはビートニクといったムーブメントは、私にとってはすでに過ぎ去ったものでしたが、ヒッピームーブメントあたりからのスタイルは、私自身の価値観や美意識に大きな影響を与えていると自覚しています。
ほとんどの場合、これらの若者の心を捉えるスタイルは、既成概念や社会体制に対する「反抗」の表現として発生してきたものだと定義づけることが出来るのではないでしょうか。
パンク然り、ヒップホップ然り、ということです。

いわゆる「ポパイ・JJ世代」というお気楽な時代背景を背負って生きてきた人間には、ヒップホップのルーツが1970年代のサウスブロンクスであるにもかかわらず(つまり、青春時代に心が向いていたのはニューヨークではなく西海岸だったので)、グラフィティに埋め尽くされた街角の佇まいを、自身が共感する心象風景として描くことは出来ないのです。
ここ数年、歳が一回り以上離れた知人のSNSをフォローしていますが、彼もすでに中年の域に達しているにもかかわらず、ファッションの嗜好はグランジから離れることもなく、街角のグラフィティに視線が止まることが多いことを興味深く思って見ています。
そんなときに、今回の展示を知りました。

作品を観に行く前に、TaKu‘ ,n(たくえぬ)くんのインタビュー記事を読ませてもらいましたが、若い頃彼は「いじめられていた。」と書かれています。衝動を感じる対象として、グランジやニルヴァーナ、ブルーハーツなどが挙げられ、バスキアには強く影響を受けているとも書かれています。
彼の作品は、バスキアと同じように強くグラフィティを感じさせるものになっています。それは「反抗/抵抗の表出」だからなのかもしれません。

話が飛んでしまうように思われるかもしれませんが、このまちでも「落書きをどうするか」ということが話し合われることが多くなっています。そこでは「反抗/抵抗を表出する権利」という視点からの議論がおこなわれることはほとんどありません。
いろいろな意味で「管理が強化された社会」を感じることが多くなっています。「反抗/抵抗する自由」はこれから増々奪われてゆくのだろうかという思いとシンクロすることになった今回の訪問でした。

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