Mocha Coffee
猿楽町の路地裏にイエメン産のモカコーヒーを専門に扱うコーヒーショップがひっそりと佇んでいます。ここでは標高1,000m以上のイエメンの高地にある農園から直接仕入れた豆を自家精製して、ハンドドリップで淹れたモカの味わいを楽しむことが出来ます。
八幡通りの大きなひまわりのモニュメントが建つ交差点をT-SITEがある亀山坂方向に進むと、左手のビルとビルの隙間にひっそりと佇む小さなコーヒーショップを見つけることが出来ます。2011年の2月にオープンしたMocha Coffeeです。
何を飲むか少々悩んだあげく、オーナーの三宅舞子さんと相談して、今日はMocha Zamarrud Al Yemenを選びました。本来、深煎りの珈琲が好みの私は、香りと酸味を楽しむモカはあまり得意な方ではないので、申し訳ないのですがメニューの選択には慎重にならざるを得ない事情があるのです。「何かスイーツといっしょに…」と思ったので、アラブの伝統的なスイーツであるドライフルーツのデーツも頼みました。
デーツといえば、強烈な甘さをイメージしますが、出していただいたものはデーツの間にピスタチオを挟んだものなどで、甘さ控えめで美味しくいただけました。
カウンターの上には、その日に選ぶことができるケーキや焼き菓子が並んでいます。日本ではあまり見かけることのないアラブのお菓子をここで知ることもできます。ケーキはお母さまが焼いていらっしゃるというお話を伺ったことがあるようにも記憶しています。
2000年以降にアメリカで、日本の喫茶店文化に影響されて広がりを見せてきたコーヒーのサードウェーブですが、その特質はシングルオリジンの豆を使用するところにあります。Mocha Coffeeでも同じモカの中から味わいの異なる農園別の豆を選択することが出来ます。そもそもモカとは、イエメンのコーヒーの積み出し港の名称であり、世界で最初にコーヒー豆の輸出がおこなわれたことから、コーヒーの銘柄の代表格になったものです。一般にモカと称される品種の豆にはイエメン産とエチオピア産がありますが、イエメン産の方が品質が良いとされており、昔からモカ・マタリと呼ばれてきました。
私たちはイエメンという国にあまり馴染みがありませんが、アラビア半島の南端に位置する国でアラビア半島では唯一の共和制立憲国家といわれています。しかし1960年代の独立後、度重なる内戦に見舞われています。
また、対岸のアフリカ大陸のソマリアでも内戦が勃発し、主にイエメンのアデン湾で海賊による人質事件が多発するようになり、日本からも航行船舶保護のために海上自衛隊が派遣されるようになっています。
2015年にはシーア派武装組織によるクーデターが勃発し、以後シーア派とスンニ派の内戦状態が現在まで続いているようですが、ちょうどその頃、三宅さんからイエメンの文化や暮らしについてお話を聞かせていただく機会を得たこともあります。
Mocha Coffeeは、もともとはイエメン出身の三宅さんの元夫がイエメン産のコーヒー豆のネット販売を始めたところからスタートし、瀬戸内国際芸術祭の開催期間中に営業したカフェの評判が良かったことから実店舗での営業を決意したそうですが、彼の話によれば、モカの酸味が強いのはいろいろな豆をブレンドしてしまっていることに因るそうです。
今日飲ませていただいた品種も、私のイメージにあるモカの酸味を感じることは無く、程よいコクが感じられるマイルドコーヒーで、上品な味わいでした。
Mocha Coffeeでは、焙煎後の豆も丁寧にハンドピックし、欠点豆を取り除いてくれています。見ていると、小皿に少量すくった豆の中から平均して2~3粒は取り除いているようでした。
ちいさい店内はサンルームのような趣です。三宅さんのお話によれば、以前はここで花屋さんが営業していたということです。たくさんの緑に囲まれた隠れ家のようなこの場所には癒しの効果があるような気がします。
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